この活動に込めた想い
子どもたちの願いを
叶える活動にする
仕事以外でも、
社会の役に立ちたい
江田島荘は、「こころと身体を元気にする温泉宿」として2021年に開業しました。有難いことに、私がこの宿の主(あるじ)のお役目を賜ることになりました。
“大人になったら仕事以外でも社会の役に立ちたい。”と思っていたのですが、総支配人になることが決まった時、いよいよ大人になる日が来たという気がしました。
しかし、いざとなるとなかなか自分なりに筋が通った社会活動に辿り着くことができずにいました。
自分は、寄附がしたいのだろうか、売名行為に思われるのではないだろうか、どういう未来図を描いたら永く継続していける活動になるだろうか……、明快な答えが出ないまま時間だけが流れていきました。
広島新生学園、
上栗園長との出会い
立ち止まったままではいけないと思っていたところ、ニュース番組で広島新生学園の特集を目にしました。
引き寄せられるように飛んで行き、上栗園長にお話を伺ったところ、クリスマスを前にサンタさんにプレゼントをお願いする機会がない子どもたちがいることを知りました。
小学2年生のクリスマスに
もらった「手のひらピカチュー」
ふと、三人兄弟の末っ子だった私に与えられる「おもちゃ」や「洋服」の思い出が頭によぎりました。
いつも兄たちのお下がりばかりで、「私のために準備されたギフト」というものを貰った記憶がありませんでした。
しかし、小学2年生を迎えたクリスマスの朝、目を覚ますと枕元に当時一番欲しかった「手のひらピカチュー」が置いてあり、心から喜んだことを今でも鮮明に覚えています。
それが私の原体験となり、将来、自分の子どもに巡り合うことができたら、「素直な心で願ったことが叶う喜び」を味わわせてあげたいと想っていました。
遠慮せず願い、
その願いが叶う経験を
園長のお父様が開設された児童養護施設で沢山の子どもたちと一緒に育ち、子どもたちの親父を務め、かくしゃくとしていらっしゃる姿に、微力ながら何かお手伝いしたいと思いました。
園長と話を重ねる中で児童養護施設の実態について教えていただき、これまで知らなかった事実に胸が熱くなることもありました。
クリスマスに話が及ぶと「地元の奉仕団体からいただけるお菓子がここの子どもたちにとってのクリスマスプレゼントです。」とご説明されました。
奉仕団体の方々が継続してこられたことへの尊敬の念を抱きながらもこの事実が私の原体験と重なり、その場で「私にも何かお手伝いさせてください。」と伝え、創意工夫しながらこの活動がスタートしました。
一歩踏み出すにあたり、寄附金を渡すだけではなく、“子どもたちが遠慮することなく、無邪気に何かを望み、それが実現するという機会を創ること”にチャレンジしてみようと思いました。
大切なのは、子どもたちから叶えてみたいことや欲しいものを引き出し、それを一つずつ叶えることだと思いました。
そうすることで、単にクリスマスにプレゼントが届くことに留まらず、子どもたちが抱く将来の夢や希望が叶うことの小さな原体験になると思ったからです。
子どもたちの願いを叶えるには私の仲間だけでは到底賄うことができませんので、賛同してくださる方を募ることにしました。
そして、賛同してくださる方の篤志をプレゼントに替えてお渡しするだけだといいとこ取りになってしまうので、その方々には、私の仲間がこしらえたものを返礼品にしようと考え、手作りのお菓子を用意したりしました。
活動の2年目からは、賛同してくださる方の中に「お返しは要らないからずっと続けてね。」と仰ってくださる方も増えました。
「子どもたちの願いを叶える活動にする」
それは決して大げさな言葉ではありません。ただ、クリスマスの夜に、子どもたちが胸の内で静かに願う――「これが欲しい」「サンタさんにお願いしたい」「こんなことができたなら」
そんな素朴でまっすぐな想いを、確かに叶えてあげたい。それだけのことです。
けれど、その“たったそれだけのこと”を実現することが、どれほど多くの大人のこころを動かし、どれほどの時間と手を必要とするのかを、私と周りで支えてくれているスタッフは活動の中で目の当たりにしました。
子どもたちは、「何かを願う」ことを意識したとき、ほんの少し社会を信じはじめます。
そして、その願いが叶った瞬間、彼らの中で「世の中は優しい場所だ」という最初の確信が生まれるんだと活動を通して実感しました。
それは、静かに灯る“こころの灯火”になるのではないか、そうあって欲しいと願います。
この活動では、まさにその灯を一つずつ灯していくことを心掛けてきました。
贈り物は、ただの“モノ”ではなく、『君の願いは、誰かの手によって叶えられる』という経験そのものです。
未来の希望へ。
次の誰かの願いへ。
その経験こそが、子どもたちのこころに、希望の根を張らせると信じています。そして、それが大人になって何かに挑戦することへと繋がるならばこの上ない喜びです。
家庭の中で、親から子へ自然に注がれる愛情の代わりに、私たちは“社会の大人”として、その喜びを共に分かち合いたい。
子どもたちが、他の子どもたちと同じように、“ねだる”ことを恥じず、“願う”ことを恐れず、“叶う”ことを信じられるように。
それがこの活動の原点であり、私たちの目指すべきものだと思います。
願いを叶えるという行為は、同時に未来を信じる行為です。
小さなプレゼントが、やがて誰かの原体験となり、その原体験が、また次の誰かの願いを叶えるきっかけになる。
そうして“想いの連鎖”が受け継がれていくことを、私は信じています。
江田島という小さな島から生まれたこの活動が、子どもたちの願いを叶え、大人たちのこころを温め、やがて日本のどこかでまた新しい灯をともしていく。
これからもその年々の子どもたちと私たちの成長に合った、いろいろな想いを込めて継続していくつもりです。
ジングルベルこども願い基金
代表 阿部 直樹